「え!?これが板金工場の事務所!?」CARRY BASE(キャリーベース)に足を踏み入れた人は、きっとそのイメージとのギャップにまず驚きます。
そこにいるだけでワクワクしてくるような北欧風のおしゃれなデザイン空間で行われているのは、キッチンカーづくりの打ち合わせ。CARRY BASEはキッチンカーやキャンピングカーなどの製造・販売を行うブランドです。
そして、そのブランドをプロデュースするのが「有限会社小川原自動車鈑金」。盛岡市土淵にある板金塗装会社です。なぜ、まちの板金工場がキッチンカーづくりに乗り出したのか?次期社長となられる小川原 航さんにお話を伺いました。
自動車に対する価値観が変わる中、カーライフを豊かにする方法を探していた
いつかはクラウン―。そんなふうに自動車を所有することがステータスだった時代もありますが、今は自動車に対する価値観もどんどん変わってきています。ただものを運ぶだけではなく、「移動空間」という価値がこれから求められてくるのではないか、と私は考えています。
当社はこれまで、車検整備や板金塗装を事業の柱としてきました。その中で培ってきた職人の技能・技術を活かして、カーライフを豊かにできる新しい取り組みはないかなと考えていたタイミングでひらめいたのが、キッチンカーやキャンピングカーという空間を創造する新たな事業でした。
海も、山も、川もあるこの岩手で、大きなキャンピングカーはロマンで終わってしまいがちです。しかし軽トラなら……。そうやって少しずつアイデアを固め、かたちになりました。
板金塗装の技術があれば、家もつくれ
以前、自社の職人と話をしているときに「板金塗装ができれば、家も建てられるぞ」と言われたんです。こんなこと家づくりの専門家である森の音さんに言うと怒られてしまうかもしれないですが…。普段から鉄板を切ったり、樹脂を溶かしたり色々なことをしているので、加工はお手の物なんです。
設計図さえあればできると言うので、私が手書きの設計図を描いてみたら、本当にその通りにつくるんです。きっとうちだけじゃないと思うのですが、職人さんって自分からは言わないんですけど、「これつくってみて」と言ったらだいたいできてしまうんですよね。
この腕と技術があれば、できないことはないと確信しました。
私たちは、NOを言わない。
CARRY BASEのキッチンカー、キャンピングカーの特徴は何よりも安全で安心であること。私たちは自動車のプロであり、加工の知識も豊富だからこそ、車に箱を載せたとき、どこにどんなダメージが蓄積しやすいのかも全て分かります。ずっと安心して乗り続けていただけるように、アフターメンテナンスの体制は万全に整えています。
おぎゃーっとこの世に生まれてから、お亡くなりになるまで、車の一生にずっと寄り添っていくことを大切にしています。
CARRY BASEでも板金塗装の事業でも、当社の約束事として、「NOを言わない」ということがあります。どんなご注文であったとしても、まずは受付をしろと昔から言われてきました。
うちだったら解決してくれるかもしれないという気持ちで扉を開いてくれたのだから、「それはやってないんですよ~」なんて門前払いすることは絶対にしません。どうしても自社でできない場合は、人のつながりを活かしてできる方法をご提案します。
「キャンピングカーのトイレを修理してくれ!」
「水回りのポンプが壊れた!」
「家のポストを塗ってくれ!」
なんていう、(うち、車屋ですけど!?)と思うようなご相談もありますが、何でも対応しています。職人さんたちの確かな技術があるので、やってしまえばできてしまうんですよ。
最近は、他社でつくられたキッチンカーなどのメンテナンス依頼も増えています。
一念発起して、事務所をリニューアル
このCARRY BASEがある場所は、もともと自社で持っていたテナント物件でした。コロナのタイミングで入っていた中古車販売の会社が退居してしまい、ほぼ同じタイミングでCARRY BASEが立ち上がりました。「やるからには本気でやろう!」と投資を決め、森の音(㈲美建工業)さんにお願いをして内装を一新し、新拠点として活かすことにしました。
実は、森の音さんには事務所のリフォームだけでなく、CARRY BASEという事業づくりでも大変お世話になりました。経営者の集まりでご一緒させていただいた社長の櫻田さんには、立ち上げのチームとしても加わっていただき数字の面から空間デザインの面まで、たくさんのアドバイスをいただきました。
最近はキッチンカーを中心にご依頼をいただくことも増え、ホームページの閲覧数も右肩上がりです。特にコロナで一度お客様が離れてしまった飲食店の方々から、お店でお客さんを待つのではなく自ら売りに行くという方向に舵を切りたいということでご相談をよく受けています。
私たちがつくっている車は、家と同じで一つ一つお客様のご要望に合わせてカスタマイズしていきます。この新しいオフィスで5回でも10回でも、納得いくまでお打ち合わせを繰り返し、世界に一つの車をつくっています。
未来は、旅行代理店やイベント会社に
私の中でCARRY BASEは将来、旅行会社やイベント会社になるという構想を持っています。インバウンドで岩手県にやってきた外国人観光客の方向けの、大型バスではいけないツアーを企画したり、キッチンカーが集まるイベントを起こして全国から出店者さんを集めたり、とアイデアはたくさん溢れています。その前身として、今は、自社で制作したキッチンカーやキャンピングカーのレンタル業もはじめました。
みんなが肩肘はらずに、Cafeのように気軽に使えたりシェアできたり。そんなブランドに育てていきたいと思っています。
今は、サウナカーも研究しており、まだまだ色々な可能性に満ちているなと、この先が楽しみです。
SHOP DATA「CARRY BASE」
Instagram:@carrybase_official
https:www.instagram.com/carrybase_official/
ホームページ:
https://www.ogawaharabankin.co.jp/carrybase/
住所:岩手県盛岡市土淵字谷地道118-1